Tuesday, August 21, 2012

カディッシュ - ユダヤ教服喪者の祈り

  
 グリニッジビレッジの 日が当たる歩道を 歩きながら 今 あなたのことを 考えるのは変な気分だ。 矯正下着と 眼鏡を付けずに行ったね
 マンハッタンのダウンタウン 澄み切った冬の午後 昨日の夜は一睡もしていない しゃべって
しゃべって カディッシュを声高く読み上げた 盲目のレイ・チャールズが ブルースを叫ぶのを 
レコードから聞いていた
 リズムが重なり - そこに 私の頭の中で 3年が過ぎた あなたの思い出も重なった
- 韻律詩として 最後の 成功を勝ち得た アドネイスを大きな声で読んだんだ - 涙が出た
 私達がどんなに苦しんだか 気づき始めて -
それに 死がいかに 全ての歌唄い達が夢見る救済であるか ヘブライ賛美歌の予言であるか
仏教の本にある答えであるか 私が思い浮かべる - 夜明けの中の - 枯れた葉であるか 考えたんだ
 人生を夢うつつに振り返る あなたのいた時間 - そして 黙示録の中の終末へと加速する私の時間 
 終末 - 花が燃える日 - その後 何が来るのだろう
 自分自身の頭の中を覗いてみると アメリカの都市が 瞬きの中に消えるのを見たような気がする 偉大なる私や 偉大なる中国もだ それとも あなたかも それかお化けロシアだ いや決して存在しなかった ぐちゃぐちゃのベッドかもしれない
まるで 無意識の暗闇の中で 逃げ隠れする 詩のよう 
何も言うことはないよ 何も嘆くことはない 
夢の中にいるということ以外はね 
夢の消滅という罠が 仕掛けられてあるから
署名したんだ それと一緒に 叫んでいるんだ 幻影を売って買って 互いを崇拝しているんだ
 崇拝 - ありとあらゆる神を - そうしたいという 願望? それとも 否応なく? - もちこたえる間 予言に満ちた心象風景 - それ以外に 必要なものは?
 私のことに戻るよ 家を出て 通りを歩き 肩越しに振り向いて 7番街が見えた 
銃眼窓の付いた オフィスビル群が 互いよりも高くなろうと 肩を並べている 雲の下で 一瞬 空ぐらいに高いかと思ったけど それらは 空の下 昔からの青い場所
 それか 大通りを南へ下っていこうか どこへ向かおうか - ローワーイーストサイドに向かって 歩くと - 50年前に あなたが歩いたところだよ 小さな女の子が見えた - ロシア人だな アメリカの有害なトマトを初めて口にしていた - 波止場で何かに怖がっている -
 オーチャード通りで人込みにもまれて みんな 何かに向かっている - ニューアークに向かっているんだとさ 
 向かうべきは キャンディーストア 20世紀最初の自家製ソーダ 奥の部屋の かび臭い茶色の床板の上で 手によって回される 撹乳器とそのアイスクリーム -
 向かっているのは 教育 結婚 神経症の発作 手術 学校で教えること 生徒をしかるのを学ぶこと 夢や - なんなんだ この人生は?
 向かっているのは 窓の中の謎 - マンハッタンの一番高いところで光る明かりに 頭を載せて
偉大な謎は 横たわっている 床の上でも 歩道でさえも横になっているんだ - 強烈な光線の中 動き続けている まるで 私が今 ユダヤ言語の劇場方向に 向かって歩いているように - その後は 貧しい人たちの住む地域だ
あなたも知っていたでしょう? 私も知っているよ 今は大して気にも留めない 
パターソンで育ち あそこを出て 西へ行き ヨーロッパに行った そしてまた ここに戻ってきたのは 不思議だと思う 
 戸口でスペイン人が 泣き言を言っているのが聞こえる 浅黒い肌の 少年達が通りでたむろしている 非常階段は あなたぐらいに年を取っている
 - ああそうだ あなたは もう年を取っていないね それは私と一緒にここに残されたね
私は だいたい 宇宙と同じぐらい年を取っているかな - 宇宙は - きっと私達と一緒に死んでしまうだろうと思っている - 来るべきものを 全て消してしまうぐらいは 備わっている - すでに来たものは 例外なく 永久に消されてしまう -
 いいことだよ!後悔の念を全て断ち切って 場所を空けてやればいい - 放射能の恐怖もなくなり 愛を見失うこともなく 苦痛もなく 最終的には 歯の痛みすらなく 
 それでも その間に来るのは 魂を食べる ライオンだろうな - 子羊も食べる 魂はもちろん
私たちのだ ああ 悲しいよ 荒々しい飢えのために 自らの身を犠牲にして 交換するんだ - 髪の毛や歯とかね - 骨が痛むとうなり声をあげて 頭蓋骨むき出しにし あばら骨が折れ 肌は腐り だまされ脳は頑固になり
あーあ それよりも 酷いだろうな! 私達は去勢されるんだ!あなたは助かるけど 死んだから助かったんだね 死は慈悲の心を持っている あなたは あなたの生きた世紀でお終いになった 神様とお終いになったんだろ 通り道をもらって - あなた自身と最後はお終いになったんだろ ? - 純粋な -真っ暗闇の中にいる あかんぼに戻ったんだ あなたの父親よりも前の 私たちの誰よりも前の - 世界よりも前の -
 そこで 休めるよ 苦しみはもう何もないよ あなたがどんな目にあっていたか知っているから いいことだよ 
もう あなたのための ニューヨークの夏に 広場で咲く 花々はない 楽しみもない ルイスのことを怖がる必要もない 
彼の優しさや 眼鏡にも 触れれないけど
彼の高校時代や 借金 愛 電話におびえる必要もないね
( ? 妊娠するために 共にするベッドもないし)  親戚も 誰かの手も -
 エラノーおばさんもいない - 彼女は あなたよりも前に行ったんだ - 秘密にしていたよね - あなたが彼女を殺したこと - それとも 彼女が自分で死んだんだっけ あなたに傷を残すために - 節々が 痛み続けた心 - でも 死はあなた達二人を殺した - たとえ どんな -
 あなたの母親の記憶もなくなったね 1915年 無声映画を観て 何週間も涙を流した
- 忘れていくんだ 人権を求めるマリー・ドレスラー 不当を感じたんだよね チャップリンが若々しく踊った
 それとも オペラの「ボリス・ゴドノフ」だったかな メトロポリタンオペラ劇場で シャリアピンが悲しみのロシア皇帝の声を響かせたんだろ  - エラノーとマックスと一緒に 立見席から見ていた - 資産家達が 舞台近くの中央に席を取るのも 見たんだよね 白い毛皮 ダイヤモンド
ペンシルバニアを横切る 若き社会党員達のヒッチハイク 黒くふくらんだブルマースカート 写真の中で4人の少女達が 互いの腰に手を回し 笑っている目 とても内気そうだ 処女要塞 1920年
彼女達は皆 年を取った それか死んだかな 今は - 墓の中で伸びる髪 - もしついていたら 夫達も後から来てくれる -
あなたはよくやったよ - 私は来ただろ - ユージン兄さんのほうが先だけど ( 今でも悲しんでいるよ 曲がりにくくなった 彼の残った手のこともあるし これからも悲しみ続けるだろう 癌をくぐり抜けていくにつれて - それか殺されるよ - もう少ししたら きっと - 今に彼は考え始めるんだ -)
 そして あれはきっと 彼らみんなと会った 最後の瞬間だった 自分の目で - あなたのではなく あなたが感じていたことを 私は感じとることができなかった - 口汚く ののしる みにくい裂け目が 開く前 なにがあったの?- あなたに - その用意は出来ていたの?
どこへ行った?暗いところ - そこは - 神の中? そこは輝いている?それとも 無の中?
一度 夢に出てきたことがある 黒い雲の中に浮かぶ 目のよう? 神はせめて あなたといるんでしょう?
 私の記憶の範囲外だ!推測不可能だよ!ただ単に 墓の中で眠る 黄色い頭蓋骨ということだけじゃない 死体に群がる 蛆虫でもない 汚れきった リボンでもないし - しゃれこうべに後光?信じられる? 
 ただ単に 一度だけ 心の中で 太陽が光ったというだけなんだ 存在したのは 瞬きだけだったんだ それ以前に何が 
 私達が 手にしている以上のものはない - あなたは 手にしていたか - 可哀想すぎる - でも勝ったんだよ 
 ここにいたこと 変化したこと まるで木のように 折れてはいるけど それか花 - 土を耕すために 育った - でも怒っているんだ 花びらをつけて 綺麗な色をして 偉大なる宇宙のことを 考えている ふるえて 頭を切られて 葉をもがれ 卵ケース病院に隠れている 布を巻かれて 痛みを感じている 月に狂わされて 全くの無価値ではない
 花と言っても ああいう花じゃないんだ 庭に咲いているだろ ナイフと戦う奴 - 負けるけどね
 馬鹿な雪男が 持ち前の冷酷さで 切り取るんだよ - 春だろうと - お化けの考えることは 全く変だね - いくつか死が欲しいんだな - 尖ったつららが彼の手の中にある 古いバラで作られた 花冠 - 犬一匹が 彼の目になる - おんどりに 過酷労働をさせて - 彼の心は電気アイロンなんだ 
 人生の 蓄積物 全て 私達をくたびれさせる 時計や 体 意識 靴 胸 それは因果の原因  息子達 それはあなたの共産党員  被害妄想 そして病院送り 
 あなたは一度 エラノーおばさんの足を蹴ったよね その後 心臓に欠陥が見つかり 彼女は 死んだんだ 一打撃やってやったね 眠っている? 一年以内にだなんて 二人とも 姉妹で死ぬなんて エラノーおばさんは 幸せそうかい? 
 マックス-悲嘆者-グリエブスは ローワーブロードウェイのオフィスで 生きているよ 一本の幅広口ひげを付けた 真夜中すぎも働く 会計士だ よく知らないけどね - 彼の人生は過ぎて行く - 彼にも見えるとおり - 今更 彼が 何を疑問にするって言うんだ 今でも 金持ちになる 夢を見て その夢がもう 金を作ったかもな 看護婦を雇い 子供達がいた あなたの名声の中でも 彼の名前が 見つかるんだよ ナオミ 
 近いうちに 彼に会うんだ 今は その話はいい - あなたと喋りたいし - ほら あなたの口があったときは しなかったから 
 永遠 私達は もうそこから 追い出された 永遠 - エミリー・ディッキンソンの馬のように - 頭から尻尾まで 
あいつらは やり方を知っているんだよ - あの馬達 - 私達が 考えるよりも ずっと速く走れる - あいつらは 私たちが所有する 人生の上を駆け抜けていくんだ - そして 一緒に連れて行ってしまう 


 すばらしい もう悲しくないな 欠けた心 閉じ込めた気持ち 結婚 夢 運命の変更 - 認識 直面 殺人者に とどめをさされる 
 与えられた世界では 花が狂う ユートピアは作られず 松の木下で 悲しみと共に 撃たれる 地球から施しを頂戴し 孤独に心を慰められる ヤハウェ 唯一神 受け入れる
 匿名で たった一つの顔を持ち 永遠に私の頭上にあり 始まりもなく 終わりもない 死をつかさどる神 とは言っても私はこの予言には 向いていない 結婚もしていないし 賛美歌も歌えない 昂揚感の中では 何も考えられなくなるんだ それを求めているし
 汝よ 天国 死後 何にも無い中で 唯一ありがたいね 光じゃないし 暗闇でもない 一日の無い永遠 -
 これを持って行くんだ この聖詩 私からだから ある日 私の手の中で一杯になり こぼれ落ちそうになったんだ 今 私の時間の一部が何でも無いものに捧げられているんだ - あなたを祝福すること - 死んでいるけど
 ここで終わりだよ 荒地から救い出される 疑問を抱え続ける人たちのための道 全ての探索者達が休める家 黒いハンカチーフが 涙で洗われている 賛美歌の上のページ 私とナオミに訪れる 最後の変化 - 神の完全なる 暗闇に向けて - 死 幽霊達よ 汝らがいる場所から 動くんじゃない   
 

Ⅱ 

 また そして また - 繰り返される - 病院の - まだ あなたの歴史を書いていなかった - 曖昧にしておこうか - 2、3のイメージだけで
 頭をよぎる - まるで家の中で 何年にもわたって響く サクソフォーンのコーラスみたいに -電気ショックのことを覚えている 
 パターソンのアパートメントで 子供にとっては長い夜だった あなたが神経過敏になっているのを見ていた - あなたは太っていたよ - あなたが次に何をするか -
 学校を休んで 家にいて あなたの世話をした 午後だった - 一度 それでもう二度としないと誓った - 一度 ある男が 宇宙に対する 私の意見に対して 意義を唱えた時にも こういう論争は二度としないと誓ったんだ 論争には負けてしまうし -
 苦しんだあとだった - 人類を啓発しようと誓った - これは 解放であるしね 特に変わった人々にとっては - ( あなたぐらいに 気がふれた ) - ( 穏健な 調和を得るこつ ) 

 だけどあなたは窓から ブロードウェイ教会の角をにらみつけ ニューアークからやってくる 謎の暗殺者を 警戒していたからさ
 医者に電話すると 「少し 休みをとりなさい」 - だから私はコートを着て あなたと一緒に通りに出た - 途中 男子中学生がわけのわからないことを叫んだ - 「お前どこ行くんだよ その人殺しにいくの?」 私は肩をすくめた -
 あなたは ダウンタウンに流れ込む 毒ガスに対抗するガスマスクとして 古く使い込んだ 毛皮の襟で鼻を隠していた おばあちゃんが撒き散らしたんだよね -
 チーズの箱みたいな公共バスの運転手は ギャングのメンバーだったっけ?あなたは彼の顔を見ると震え上がり バスに乗せることが出来なかった - ニューヨークに行きたかったけど タイムズスクエアなんて 別のグレイハウンドバスに乗ろうか -
 そこで 目に見えない虫や ユダヤ人の病気と戦いながら 2時間ぐらい過ごしたね  - 風には ルーズベルト大統領が毒を入れてあるから -
あなたを連れ出そうとしたんだ - 私はあなたの言うことに従っただけなんだ 湖の近く ビクトリア朝の家にある静かな部屋にでもいれば 収まるかと思ったんだ
 トンネルやアメリカの工場たち全てを通り過ぎて 3時間は乗っていた ベイヨン街は第二次世界大戦に向けて準備していた オイルタンク ガス工場 ソーダ工場 安食堂 機関車修理工場 要塞 - それらがニュージャージーインディアン達の松林へと 向かっていた - 静かな街 - 長い道が ざらついた木々の広がる土地を横切っている 

  鹿のいない小川にかかる橋 インディアン達の金が流れにのせられているんだ - もっと下流にあるトマホークの斧に届くよう それでなければ ポカホンタスの骨へ -
 何万もの年老いた女性達が 小さな茶色い家に住む ルーズベルトに投票している 狂ったハイウェイを降りて行く -
 多分 木に止まった鷹かな いや 隠者がフクロウのとまる枝を探している -
 ずっと言い争っていた - 前の席に座る 知らない人を怖がっていたから 関係ないとばかりに いびきをかいていた - 今じゃ いびきをかけれるような バスなんてあるのかな?
 「アレン あなたは分かってないのよ - あの - 背中に 3本の太い棒を 突き刺されて以来 - あいつら病院で私に何かしたのよ 毒を飲ませたの 私が死ぬところをみようと - 3本の太い棒 3本の太い棒 -
 「くそ女!ばばあ!先週もあいつを見たんだ じじいみたいなズボンを履いて 袋を背中に担いで アパートメントの壁をよじのぼろうとしていたんだ 
 「非常階段の上に 毒のネバネバ 私に投げつけるため - 夜になると - もしかしたら ルイスが助けてくれるかもしれないと思った 彼は彼女に圧倒されていたけど
 「私は あなたの母親よ レイクウッドに連れて行って」 ( ツェッペリン気球船が 以前 墜落した場所の近く 全てのヒットラーは爆発している ) 
 「どこか私が隠れれるところ」
 私達が着いたのは - ドクターワトジスの別荘 - 彼女は早速 クローゼットの奥に隠れた - 輸血が必要だと訴えていた 
 私達は追い出された - 旅行かばんを手に 影の落ちた芝生の上に立つ 見知らぬ家に向かっていた - 夕闇の中 松の木々 その下に広がっていく暗闇 - コオロギと ツタウルシで密集する 死んでしまったような 長い道を歩いた -
 あなたを 静かにさせたかった - 大きな家だった 保養所 部屋あり - 大家のおばさんに 一週間分の金を渡して - 鉄製の旅行かばんを運び込んだ - 部屋のベッドに腰掛けて 逃げ出したかった -
 きちんとした屋根裏部屋だったよ 親しげな ベッドカバーがかかっていて - レースのカーテンもあった - 機織で織られた絨毯 - しみの付いた壁紙は ナオミぐらいに古かった 家にいるような気分だった
 ニューヨークに戻る次のバスに乗った 最後尾の席に頭を乗せて 落ち込んでいた - もっと酷くなるのだろうか? - 彼女を置いてきぼりにした あまり感じないようにした - 私はたったの12歳だったんだ 

 彼女は部屋に隠れて 朝ごはんになると元気に出て行くのかな? それとも部屋に鍵をかけ 道に潜むスパイ達を 窓からにらみつけているだろうか? 鍵穴に耳をつけ ヒットラー崇拝者らの目には見えないガスの音を聞こうとしているだろうか? 椅子に座って 夢を見ているだけなのかもしれない - それか私のことを からかおうとして - 鏡の前で 一人で?
 ニュージャージーを通り抜ける 夜間バスを12も乗り継ぎ レイクウッドの幽霊屋敷に ナオミを宿命の中に残してきた - 私自身の宿命のバスに乗り - バスの席に沈み込んだ - バイオリンが全て壊れているのに音を出しているような気分だった - 肋骨の中で私の胸が痛むんだ - 頭の中は空っぽだったよ - 彼女は棺おけの中のほうが 安心するんじゃないか -
 ニューアークの普通の学校に行ったんだろ 黒いスカートを履き アメリカのことを勉強して - 通りに冬がやってきたとき お弁当が無くなった 1ペニーのピクルス一つだけになった - 夜になると家で エラノーおばさんの面倒を見て 寝かしつけて -
 最初に神経症の発作が起こったのは 1919年 - 学校を休んで 3週間 暗い部屋で休んでいた - 何か悪いことが - 決して 何が原因だったか言わなかった - 小さな物音に痛めつけれ - ウォールストリートがきしむ音を聞いたんだ -
 ものが灰色に見えるようになる鬱が始まる前 - ニューヨークに行った - 回復していた - ルーが撮った彼女の写真がある 芝生の上に足を横にして座ってた 長い髪が花と一緒に 風に
吹かれている - にっこりと笑っている - マンダリンで子守唄を弾くこともできた - つたうるしを焼いた 毒ケムリが 左翼のサマーキャンプにまかれ 私は喋ることが出来ないぐらいの 小さな子供 木々を見ていた -
 それなら 学校で教えていた頃の話をするよ 間抜け達と一緒に笑った 発達障害クラス - 彼女のロシア特派員 - 夢見るような口をした 低脳 すばらしい目 細い足 うんざりする指 骨が曲がっていた くる病 -
 素晴らしい頭たちが アリスの不思議な国の上にぶら下がっているんだ たくさんの猫が 黒板に描かれている 
 ナオミは辛抱強く 共産主義の産物のような お伽話を読んでいる - 突然 支配者により与えられる 甘い話 - 魔法使いの恩赦 - 軍隊の宣誓 -
 緑色のテーブルを取り囲む されこうべ - 王と労働者達 - パターソン印刷は30年代まで それらを印刷し続けた 彼女が怒り狂うまで いや 彼らが商売をやめるまでだったかも 両方だよ きっと
 ああ パターソン! 家に着いたのは夜も遅くなってからだった ルイスは心配していた 私は何でそんなにも - 考えもしなかったのかな? 私は彼女を残してくるべきではなかった 狂ったままレイクウッドに 医者に電話した 松の木下の家にも電話した 遅すぎた 
 くたくたに疲れきりベッドに向かった 世界から逃げ出したかった
(その年 私はRに恋をしはじめていた - 私の高校時代の 心のヒーロー 後々医者になったユダヤ人の少年 物静かで すてきな子供だった -
その後 私は彼のために人生を投げ打ったんだ マンハッタンに引っ越して 大学も一緒にした - フェリーの上で もし大学に入れたら 人類を助けるよう努めますと祈ったんだ - 誓ったんだよ その日は入学試験に向かっているところだった -
 正直で 革命的で労働者のために働く弁護士になると - そのための教育を受けに行ったんだ
- サッコとヴァンゼッティ(冤罪で処刑されたアナキスト)、ノーマン・トマス(社会主義者)、デブス(労働組合組織者)、オルトゲルド(児童労働法などの労働問題解決に努めた)、サンドバーグ(詩人)、ポー(詩人)-リトルブルーブックス (階級の垣根なく平等に自由な知識の普及のために出版されていた本) それらに影響され 刺激されていた - 私は大統領になりたかったんだ それか上院議員に
 無知ゆえの悲哀 - 後に 1941年の私の愛 愛を打ち明けられ ショックを受けているRの膝下にひざまずく  - 彼は 私に とても優しくしてくれていたんだ - 私は 彼のことが欲しかったのと あきらめていたのと 両方だった - 初めての恋だったんだ - 失恋 
 激しい雪崩が過ぎた後、ホモセクシュアリティの山々がそびえ立っていた。マタホーンズのペニス達 ケツの穴グランドキャニオン - 憂鬱な頭の重さを感じていた - 
 その間も 跳ね上がる空間を持たない ゴムボールのように ブロードウェイ通りを歩き続け、永遠について想像していた - 外にあるものは何だろう? - グラハム通りの家に戻ってきてもそうだった 陰鬱に 映画を見た後 夢うつつに 通りを挟んだ緑の垣根の横を歩き続けた )
 電話がかかってきたのは、夜中の2時だった - 非常事態 -彼女が発狂している - ナオミはベッドの下に隠れて、ムッソリーニの虫が何匹もいると叫んでいた - 助けて!ルイス!シスター!極右翼!死ぬ!- 大家のおばさんはおびえ - 年取った受付のホモは彼女に 向かって叫び返しているんだぜ - 恐怖 - それが建物の住人達の眠りを覚ました - 更年期障害から回復しつつある2階の年取った女性 - 股の間の全ての生理ナプキン 清潔なシーツ 赤んぼを亡くした苦しみ - 夫の灰 - エール大学で冷笑を浮かべ ニューヨーク大学で髪にオイルをつける子供達 - それともユージンみたいに 震えながら モントクレアのカレッジで先生になるための勉強をしているかもな - 
 彼女の大きな足は 胸元まで折り曲げられ 人を寄せ付けまいと 手を外に突き出していた
ウールのワンピースがめくりあがり、毛皮のコートは ベッドの下に引きずり込まれていた - ベッドのバネの下に スーツケースで作ったバリケード 
 パジャマを着た ルイスは電話を聞いていた おびえていた - 何ができる?誰に分かった?- 私の責任だ 彼女を隔絶したかったのか? - 暗い部屋のソファに座っていたんだろう 震えて 理解しようとしていたんだろう -
 朝の電車に乗って、彼はレイクウッドへ向かった ナオミはまだベッドの下にいた - そして彼が毒警察を連れて来たと思った - ナオミは叫んだ - ルイス それ以来 あんたの心に何が起こったんだろうな? ナオミの高揚があんたを殺しちまったのかい?
 彼女を引きずり出し 角で タクシーをひろい 旅行用かばんと一緒に車内に押し込め だけど運転手は 二人を薬屋で降ろしたんだ バス停留所で 2時間待った
 私は落ち着かないまま ベッドに横になっていた 4つ部屋のあるアパートメント 居間にある大きなベッド ルイスの机の横 - 体が震えた - 夜 彼が家に帰ってきた 何が起こったか話してくれた 
 ナオミは処方箋カウンターで 敵から自分の身を守っていた - 子供達のための絵本が入った棚 ぼんくらども 鎮痛剤 鉢植え 血 - 「私に近寄らないで - 殺し屋!離れろ!殺さないと約束して!」
 ルイスはソーダ売り場で恐怖を感じていた - レイクウッドのガールスカウト達がそばにいた - コカ・コーラ中毒 - 看護婦達 - バスの乗客達 時刻によって入れ替わる - 管区内の警察 くそっ - 牧師は 崖に作られた古代の家にいる豚たちの夢でも見てたのか?
 空気の匂いをかいだ - ルイスは虚無感のことを言ってた? - 客がコカ・コーラを吐いた - じろじろ見ていた - ルイスをあざけ笑っていた - ナオミの勝利だ - まさか陰謀を発表するなんて - バスが着いたけど、運転手はニューヨークまで彼らを連れて行くのを拒否した 
 ドクターワトジスに電話すると 「彼女は休む必要がある」と言われた 精神病院 - グレイストーン国立病院の医者 - 「彼女を連れてきなさい、ギンズバーグさん」 
 ナオミ ナオミ - 汗だくで 目を丸くさせ 太っている ワンピースの片側のボタンがはずれ 眉の上に落ちた髪 ストッキングが嫌がらせのように足に絡まり 血流が とめられていると叫んでいる - 正義を訴える 片方の手は上げられ 靴がその中に入っている - 薬屋で裸足なんてね -  敵が近づいてきた - どんな毒?録音機?FBI?ジダーノフがカウンターの後ろに隠れているのね?トロスキーがネズミばい菌を店の後ろでかき混ぜているわ?アンクルサムはニューアークにいるのね?クロンボ達が住むところに毒香水をまく計画建てているんでしょ?エフレイムおじさんは 政治家の集まるバーで 殺人犯と一緒になって酔っ払ってるのよ ハーグで陰謀が企てられているの?ローズおばさんは スペイン内戦で 水の入った注射器をくばった?
 レッドバンクから 35ドルで 救急車を雇うまで続いた - 彼女は 腕をつかまれ ストレッチャーに縛り付けられた うめき声 毒を飲まされたと思い ニュージャージー中に 化学物質のゲロを吐いた エセックス郡からモリス町にいたるまで お許しくださいと懇願していた 
 そしてグレイストーンに戻っていった 3年間 彼女が横たわっていた場所 - あれ以来 物事は前に進まなかったよ きちがい病院に彼女をまた運んだんだ - どの階だったろう - その後、何度もあそこを歩いた - 強硬症患者の年取った女性達 雲のように 壁みたいに 灰色だった 床に座って ささやいている 椅子の上でも しわくちゃの 気味が悪い魔女達 責めたてられている - 13歳の私に許して頂戴と頼んでいる -
 「家に連れて行って」 - 時々 私は いなくなったナオミを探して 一人で訪ねていった ナオミはショック療法を受けていた - そして私は言うんだ 「駄目だよ、あなたは おかしくなったんだよ ママ、お医者さんの言うことを聞かなくちゃ」 - 
 
 ユージン 私の兄 彼女の年上の息子 ニューアークで家具つきの部屋を間借りして 法律の勉強をしていた -
 次の日 パターソンに戻ってきた - 居間の壊れたソファに腰を降ろした - 「グレイストーンに 彼女を 送り返さなくてはいけなかったんだ」
 途方にくれた彼の顔 とても若いんだ 目は涙にぬれていた そして ゆっくりと泣き始めた - 「なんでだよ?」 彼の声は 頬骨の中で 悲しみに震えていた 目が閉じられ 声がうわずっていた - 彼が痛みつけられているのが見えた 
 彼は遠くにいたんだ ニューアーク図書館のエレベーターで逃げたんだ 毎日 窓の下に置く 牛乳瓶で 週5ドルの家具つき部屋を 牛乳瓶の手押し車が停まる ダウンタウンに借りて
 一日8時間働いていたんだ それで週20ドル稼いだ - 法科大学に通っている間 ずっと - 黒人の売春婦達が集まるところから 潔白に距離を置き 
 寝たこともなかった 哀れな童貞 - 理想と政治について 詩を書き パットリックイブニング新聞の編集者宛に送っていた -( 私達二人とも書いた 上院議員ボラーと彼の周りの鎖国主義者達を非難して - そして パターソン市役所に疑惑を抱き 
 私は一度あそこに忍び込んだことがある - その土地の いけにえの塔 尖塔は男根を模られてある 飾り書体の大文字で書かれた 意味不明の怪奇詩 マーケット通りに立ちそびえていた
 フランスのリヨンにある 市庁舎をそのまま真似て 建物の両翼部分 バルコニー 渦巻き模様 通りの巨大な時計 クェーカー教徒迫害に 魔女裁判判事のおじさん 近親相姦叔母さんたち 家族のスキャンダルを抱え込んだ 小説家ホーソーンが ぎゅうぎゅうづめになっている 秘密の地図部屋 - 市議税からの闇口座 - レンブラントが薄暗がりの中で煙草を吸っている - 
 議員会室の中にある 磨き上げられた 沈黙の机 - 市会議委員達?市議経理?モスカのシナリオ - やくざとのつながり ジョンに命令されたんだ たわごと - 狂った男が 家の境界線のことで 悩んでいて 警察と 裏事情 - 皆 死んでいる - バス停留所で降りた ユージンは 
自分の子供時代を 見ていた - 
 そこで 30年以上も 福音伝道者が狂ったように 説教を続けていた 硬い髪  聖書に屈服され 忠実であろうとしていた - チョークで 汝の神に 道端でばったりと 会う用意をせよ と書いてある - 
 他には こんなのも 神は コンクリートの上にひかれた線路の 愛である - 彼は 私がぜひそうしてみたいように わめき散らしている 孤独な福音伝道者 - 市役所に死をもたらす )
 ユージンがもっと若かったとき 彼は モントクレアーの教員学校に4年いた - 半年だけ教えて 辞め 方向転換した - 規律を守らせることが 出来なかったんだ - 浅黒い肌の イタリア人の生徒 身持ちの悪い女子生徒が 横たわり 英語をしゃべれず 14行詩には無関心 - 彼は 色んなことを知らなかったんだ - それで彼の負け - 彼の人生は 真っ二つに裂け 法律へと情熱を傾けた - 分厚い青い本を読み ニューアークにある太古のエレベーターに乗り 13マイルを進んだ 未来のために 一生懸命 勉強していた 
 失敗と書かれた戸口で ナオミの叫び声が 一番最後に こだました時 ナオミはもういなくなっていた 私達は孤独で - 家で - 彼もそこに座っていた 
 チキンスープを飲みなよ ユージン 市役所の前で 福音男が叫んでいるだろ そしてその年 ルイスは郊外の中年男らしい詩的な恋をしていた - 秘密に - 1937年 彼の本に流れる音楽 - 真心がこもっていた - 彼は 何か美しいものを切望していたんだ 
 ナオミが叫んでから 愛はなかった - 1923年から - 今も グレイストーンのどこかで紛失している - 新しいショック療法 - 電気ショック その後 40本のインシュリン注射 
 メトラゾールのせいで 彼女は太った 
 その後 2、3年してから彼女は家に戻ってきたんだ - 私達はそのために 色々準備していた - 私もその日が待ち遠しかった - ママの料理 - ピアノを弾いてくれ - マンダリンに合わせて 歌を唄ってくれる ラングシチューに ロシア民謡「ステンカ・ラージン」 フィンランドと戦った際の共産党員達の詩 - ルイスは借金を抱えていた - 刑務所に入れられてしまうような 金じゃないかと 疑っていたけど - 謎だらけの 資本主義 
 - 玄関から入り 家具を見ていたな 彼女は何も 覚えていない 麻酔のせいもあるよ 円形のレースの敷き布を注意深く見ていた - 食堂のテーブルセットは 売り払われていた -
 マホガニーのテーブル - 20年も愛されていた - がらくた屋に持っていかれた - ピアノはまだあった - ポーの本も - マンダリンも - 弦を張り替える必要があったけど - ほこりをかぶっていた 
 彼女は奥の部屋に行き ベッドに横になり 思いを巡らせていた それか少し眠っていたのかも 隠れていた - 私は彼女の後を追いかけた 一人にしたくなかった - ベッドで彼女の隣で横になった - カーテンは閉じられ 陰気な雰囲気がしていた その日の午後 - ルイスは 表の部屋で待っていた - 夕食用に チキンを茹でるか何かしていたと思う
  「精神病院から帰ってきたからと言って 私のことを怖がらないで - 私はあなたの母さんよ」
かわいそうな愛 さまよい - 怖がり - 私はそこに横になったまま言った 「大好きだよ ナオミ」 - よそよそしく 彼女の腕の横で 泣き出したかった あれは堅苦しい 独り者達の集まりだったのか? - 緊張していた しばらくしてから ナオミは起き上がった 
 彼女が今までに 満ち足りた気持ちになったことがあるのだろうか? そして - 不安げに 窓の前のソファに一人 腰掛けていた - 頬杖をついて - 眉間にしわを寄せ - その日の運命に対して - 爪で歯の間をほじくっていた 口を丸く開け 疑い深そうに - 年取った使い古しの おまんこ女みたいに考えていたんだ - 目にはきらめきが見えなかった - 邪悪な負債が 壁に書かれているよ - まだ払われていない - ニューアークの年寄りおっぱいが近くへやってきた 
 針金を通して 彼女の頭の中で流れる ゴシップラジオを聞いていたのかな 彼女の背中に突き刺されっぱなしになっている 3本の太い棒にコントロールされている やくざが病院中で打っている麻酔 - それが両肩の間で 痛みを与えていた 
 彼女の頭の中では - ルーズベルト大統領は 彼女の問題を知るべきなんだ そう言ってたよ - でも殺すのを怖がっているらしい 今 政府は本当の姿を知られているから - ヒットラーまでさかのぼる - ルイスの家から永久に出て行きたかった 
 ある夜 突然の発作 - 浴室から聞こえる騒音 - 彼女の魂がくたばって行くような - けいれん 赤いゲロが彼女の口から出てきた - 水の様な下痢が爆発したように 後ろから出てきた - 四つ全てが一度に トイレの前で起こった - 彼女の膝の間から 小便が流れていた - 彼女の黒い排泄物で 汚れたタイルに もう少しで吐くところだった - 気は失わなかった -
 40歳 足の静脈が異常にふくらんだ裸 破滅の運命の中 アパートの部屋の外 エレベーターの近くで隠れ 警察をよんでいる 女友達のローズに助けを求めていた -
 一度なんか かみそり それか ヨードチンキだったかな それを手に立てこもった - 泣き声とシンクで咳き込んでいるのが聞こえた ガラスの入った緑色の戸を ルイスが壊した 
 私達は 彼女を引きずり出して 寝室へと連れて行った
 それから 何ヶ月かは静かだった その冬のことだ - 一人で外を歩き ブロードウェイの近く デイリーワーカーを読み - 腕を骨折した 凍った道で転んだんだ -
 宇宙経済の殺人者が作る企てから逃げなくては とまた考え始めた - その後 彼女はブロンクスに住んでいた妹 エラノーおばさんのところに逃げた 
 そこからは また別の ナオミの人生後期 ニューヨークでの話が始まる
 
 エラノーおばさんを通して それとも彼女の働いていた労働者の集い? ほら 郵便物を出したり  そこで彼女にボーイフレンドが出来た - キャンベルのトマトスープを買いに行き - ルイスの送ってくる金を貯金した (
 彼女が見つけたボーイフレンドは医者だった ドクターアイザック 国立船舶組合勤務 - ( ?今は退屈な はげでデブのイタリア人 - 孤児だった - 通りに追い出されたんだ ) - 残酷な 昔の話 -
 だらしなく服を着て ベッドか椅子に腰掛ける 矯正下着を着け 彼女自身と夢うつつ - 「暑いわ - 私は 太ってきている - 病院に行く前は あんなに綺麗な体をしていたのに - ウッドバインにいたときの頃を見るべきだったわ - 」 これは ノーザンミシガン大学の近くに家具つきの部屋を借りていたときの頃
 雑誌にのっている はだかの赤んぼうの写真を見ている ベイビーパウダーの広告 (??)
 「私は綺麗なことだけを考えるようにするわ」
 夏には 窓から入ってくる光に合わせて 首の上で 頭をグルグル回していた 催眠術にかかっていたんだ (??)
 「私があの子のほっぺたさわると 私があの子のほっぺたさわると あの子が私の くちびるさわるの 綺麗なことだけをね 考えるのよ - あの赤んぼは 美しい手を持っているの - 」
 彼女の体が ピクリともしない時がある 気味が悪い インシュリンが頭にまわっているんだ 苦痛を感じる神経が 知らず知らずに体を震わせる (私が小便をする時 ブルッと震えるように) 
 皮膚に表れている 悪い化学反応 - 「そのことを考えちゃ駄目よ あいつはネズミなの」
 ナオミ:「私達は死ぬと 玉ねぎになるわ キャベツの玉にも ニンジンにもなるし かぼちゃや 野菜になる」 私は コロンビア大学から ダウンタウンにやってきたんだ 同意するに決まっている 彼女は聖書を読んで 一日中 美しいことだけを考えているんだ 
「昨日 私は神様に会ったの どんなふうだか知ってる? そうね 午後 私は梯子を登って行ったでしょ 彼は田舎に粗末な小屋を持っていたわ ニューヨークにいるモンローさんみたいにね 林の中に鶏小屋があって 彼は白いひげを生やした 寂しいおじいさんだった」
「彼のために夕食を作ってあげたの 美味しそうな夕食を作ってあげたわ 豆のスープに パンとバター ( ?? )  彼はテーブルについて食べてた 悲しそうだった 」
「私は言ってやったのよ。 見てよ 下で起きている 争いやら 殺し合いやら。 どうしたの?なぜ止めに行かないの?」
「努力したんだよ」って 彼は言うの それが彼に出来る全てだって 疲れているように見えた 長いこと独身なのよ 豆のスープを気に入ってたわ」
 私に夕食を出しながら そう話してくれた 冷たい魚が載った皿 水道の水がしたたる刻みキャベツ 腐ったトマト 一週間古い健康食品 - ビーツとニンジンをすりおろし あちこちにこぼれているジュース 温まっている 絶望的な料理は まだまだ続く 時々吐き気がして食べれなかった 思いやりあふれる彼女の手は マンハッタンと同じく ひどい匂いがした 狂乱 私を喜ばそうとして 火が通りきっていない冷たい魚 骨の辺りは薄い赤色 彼女の匂い ひんぱんに裸で部屋にいた 最初 私はジロジロ見たが そのうち本を開き 彼女を無視した 一度 あの人は私のことを誘っていたと思う 浴室のシンクで 自分自身のことを誘惑してたよ